レジリエンスという考えの罠

レジリエンスとは心理学の用語で、
「同じようなストレスフルな体験をしても、
心理的・社会的に不適応に陥る者もいれば、そうでない者もいる。
深刻な危険性にもかかわらず、適応的な機能を維持しようとする現象」
のことを指し示します。

しかし『感情の歴史』という歴史書によると、
レジリエンスとは、労働者が過酷な状況に置かれても、
それに耐えられる搾取に、都合のよい労働条件を、肯定するために考え出されている、
と主張しています。

『児童や女性の労働実態』
石炭運びをしているエリソン=ジャックという11歳の少女の言。

「わたしはお父さんのために3年間も地下で働いています。
お父さんは朝の2時にわたしを下へおろし、翌日の午後1時か2時にわたしは上ってきます。
そして、あしたの朝すぐに仕事にいけるように、夜の6時に寝ます。
わたしが入る炭鉱の部分は、鉱層がまるで刃のようになっています。
わたしは石炭を背負って、脚立ないし梯子を4つのぼり、
やっと炭鉱の端に通じている主坑道にでます。
わたしの仕事量は桶に4~5杯で、桶には216キログラムはいります。
わたしは20往復で桶5杯をいっぱいにします。
命令どおりやれなかった時は、むちでぶたれます。」

「1883年の工場法(一般工場法・幼児労働の禁止や18歳未満の少年の長時間労働禁止)では、
ロバート=オーウェンの主張する工場監察官の設置も定められたが、
炭鉱労働の調査はおくれていた。」

苦しみの原因を、人間の内面に求める考えは、
社会による抑圧、搾取を隠蔽する傾向があります。

「社会じゃない、お前が変われ」と述べた作家がいますが、
「お前じゃない、社会が変われ」と僕は言いたい。
主体的な在り方と、社会的な構造の、双方を、改善していくことが重要なのでしょう。

『レジリエンス』のように、上層階級の隠された意図をもつ情報は極めて多い。
キリスト教の教えが、王侯貴族に歓迎されるのも、
この世での搾取を耐え忍べ、という意図が働いているのかもしれません。

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