十八史略の人物学より1
学問の仕方には4つの段階がある。記憶、血肉化、呼吸をするように学ぶ、 ゆったりと遊ぶように学ぶ。…禅の修行はまず苦行である。やがてそれは遊戯三昧に入る。 座禅を組む。足が痛い。だが次第に座禅が楽しくてしようがなくなる。 …人間は人間を信ずる以外に手はない…人間以上に有用なものはなく、 人間以上に良いものはなく、しかも最大の不幸は人間からくる。 …出処進退の退を見る。退いて後継者を選ぶ、その企業において、 自分がいなくなっても、仕事が回っていくようにする。自分を無にするのである。 …主に憂いがあるときには労し、主が辱められたときには死をもってあだを報いるべきである。 そして戦いに勝った時には臣下は君主のもとを去るのである、と范蠡は言う。 越王の勾践は、范蠡に越に残るように、さもなければ殺すぞ、と范蠡に伝える。 范蠡はすでに逃げていた。范蠡は言う。艱難は共にできても安楽を共にするのは難しい。 …范蠡の次に力量があった文種は、越王、勾践への未練を断ち切れなかった。 そして病と称して出仕しなくなった。 文種をやっかむ連中が、この際とばかり、越王、勾践に中傷した。 文種は反乱の準備を進めていると。勾践も最初はそんな馬鹿なことがあるものか、と思っていた。 しかし多数の者が繰り返し中傷するうちに、ひょっとすると、と疑惑を覚える。 勾践はついに文種に自殺を命じた。 …英雄の多くはまことに身勝手である。用事のある間はナンバー2の才能を大事にするが、 功業成って収穫期にはいると、かつては下へもおかぬほど大事にした功臣を次々と粛清してしまう。 英雄はすべて独裁者である。たとえば毛沢東が。